結局AIって何を使えば良いの?地域の現場で「今日から」使える現実的な選択肢

「AI(人工知能)」と聞くと、ニュースで見る凄い技術を思い浮かべるかもしれません。しかし、現場の経営者の方が知りたいのは、「で、ウチの会社は何を使えば楽になるの?」という一点ではないでしょうか。

世の中には星の数ほどAIサービスがありますが、地域の中小企業が使うべきは、大きく分けて2種類です。

一つは、「事務作業」を楽にするもの(ChatGPTやGeminiなど)。もう一つは、「現場作業」を楽にするもの(画像検査やルート作成アプリなど)。

この2つを使い分けるだけで、仕事のやり方は劇的に変わります。この記事では、難しいカタカナ語を抜きにして、明日から「何を使えば良いか」を具体的にお伝えします。

「人が増えない」時代の、新しい現場の回し方

地域に限らず、田舎の悩みは共通しています。「求人を出しても電話が鳴らない」「若い子はみんな札幌や東京へ行ってしまう」「ベテランの○○さんが引退したら、あの仕事は誰がやるんだ」。

美しい自然とおいしい空気。住んでいる環境は最高ですが、商売をする上での「人手不足」は年々深刻さを増しています。これまでは「気合」と「残業」でなんとか回していた現場も、そろそろ限界が来ています。

そこで提案したいのが、AIという選択肢です。「機械に仕事を奪われる」なんて心配は無用です。むしろ逆で、「人がやるべき温かい仕事」を人間がやるために、面倒な仕事を機械に押し付けてしまおう、という考え方です。

現場別・今日から使える「助っ人」活用術

では、具体的にどう使うのか。地域でも多い「食品加工」「運送」「観光・飲食」の3つの現場で考えてみましょう。

1. 食品加工・製造:職人の「目」を少しだけ借りる

地域には、美味しい乳製品や野菜、加工肉を作る素晴らしい工場や工房がたくさんあります。ここで一番の宝物は、長年現場を支えてきたお母さんや職人たちの「目」と「勘」です。

「この野菜はちょっと形が悪いから除こう」「今日この気温なら、こねる時間はこれくらい」。この熟練の技を、AIに少しだけ手伝わせることができます。

例えば、「外観検査AI」。高価な専用機械はいりません。スマホやタブレットのカメラをかざすだけで、AIが「これは規格外」「これはOK」と判断してくれます。もちろん最終確認は人がやりますが、一次選別をAIがやってくれるだけで、目の疲れも作業時間もぐっと減ります。

職人さんが引退しても、「あの人の基準」をAIが覚えていてくれれば、新人が入っても味や品質を守りやすくなるのです。

2. 運送・物流:広すぎる道東を賢く走る

道東の物流は、距離との戦いです。釧路まで、網走まで、帯広まで。冬になればホワイトアウトとの戦いも加わります。ベテランのドライバーさんは知っています。「冬のこの時間の国道は凍るから、少し遠回りでもこっちの道がいい」「あそこの峠は鹿が出るから気をつけろ」。

この「経験知」に、AIの計算力を足すとどうなるか。「AI配送ルート作成」は、渋滞情報、過去の事故データ、天気予報を全部ひっくるめて、「今、一番安全で効率的なルート」を数秒で弾き出します。燃料代が高騰する今、無駄な走行を減らすことは利益に直結します。

また、帰庫してからの日報作成も、今は「音声入力」の時代です。疲れた体でペンを握る必要はありません。スマホに向かって「今日は○○へ配送、完了。道路状況異常なし」と話しかけるだけで、文字起こしされた日報が完成します。ドライバーさんを1分でも早く家に帰してあげる。それも立派なAI活用です。

3. 観光・飲食:波のある忙しさを乗り切る

摩周湖や川湯温泉。観光のお客様が戻ってきたのは嬉しいけれど、波が激しいのが悩みの種。急に外国のお客様が団体で来て、言葉が通じずにパニック……なんて経験はありませんか?

こここそ、AIの出番です。「翻訳AI」を使えば、スマホ越しにスムーズな接客ができます。メニューの説明やアレルギーの確認など、言葉の壁はAIに任せてしまいましょう。そうすれば、スタッフは本来の仕事である「最高の笑顔でおもてなし」に集中できます。「機械的な対応」になるのではなく、「心の通う接客」をするための余裕を作るのです。

また、「メニュー作成」もAIにお任せです。外国語メニューを作るのに、翻訳業者に頼む時間もお金もない。そんな時、スマホで料理の写真を撮ってAIに見せれば、「北海道産のジャガイモをふんだんに使った〜」という魅力的な説明文を、英語や中国語でその場で作ってくれます。画像生成AIを使えば、プロに頼まなくても美味しそうなポスターやチラシのデザイン案が数分で出来上がります。

さらに、「需要予測」も便利です。「去年の今頃、何がどれくらい売れたっけ?」AIは過去の売上や天気予報から、「明日は寒くなるから温かいメニューがこれくらい出るはず」と予測してくれます。食材の廃棄(ロス)を減らすことは、そのまま利益アップにつながります。

AI活用で「失敗しないために」

ここまで「AIは便利だ」と話してきましたが、「これだけは気をつけてほしい」というポイントがあります。

会社の秘密は教えない

AIは優秀なお喋り好きです。「来月の新商品のレシピ」や「お得意様の個人情報」など、会社の秘密はAIに入力しないでください。会話の中でうっかり学習されて、他の誰かに答えとして喋ってしまうリスクがゼロではありません。「新聞に載っているような公開情報」や「一般的な相談」に留めるのが、賢い付き合い方です。

山奥でも使えるか確認する

道東・地域ならではのポイントです。素晴らしいAIツールも、携帯の電波が届かない山奥や峠では動かないことがあります。導入する前に、「オフラインでも使える機能があるか」あるいは「電波の入る営業所に戻ってから同期すればいいか」を確認してください。かっこいい最新ツールより、「泥臭く、どこでも動くツール」を選ぶのが、現場で失敗しないコツです。

「高い・難しい」は昔の話

「でも、お高いんでしょう?」そう思われるのも無理はありません。昔はシステム導入に何百万円もかかりました。しかし今は、月額数千円から使えるアプリやサービスがたくさんあります。

なんなら、最近話題の「ChatGPT(チャットジーピーティー)」や、Googleの「Gemini(ジェミニ)」、Microsoftの「Copilot(コパイロット)」などは、基本的な機能なら無料で使えます。これらは「事務作業を楽にするAI」の代表格です。「キャッチコピーを考えて」「挨拶文を作って」「このExcelの計算式を教えて」。そんな「ちょっとした相談」なら、今すぐスマホで始められます。

商工会や、地元のPCに詳しい若手に「ちょっと教えて」と聞いてみるのも良いでしょう。まずは「仕事」と構えず、「新しい道具で遊んでみる」くらいの感覚で触ってみてください。

迷ったら、まずはこれを使おう

「結局どれがいいの?」と迷うなら、以下の基準で選んでください。どれも無料で始められます。

1. 「ChatGPT(チャットジーピーティー)」:アイディア出しの王道

一番有名で、人間らしい会話が得意です。「新商品のキャッチコピーを10個考えて」「お礼のメールを書いて」といった「文章やアイディア」が欲しいなら、これ一択です。

2. 「Gemini(ジェミニ)」:最新情報とスピード

Googleが作っているため、検索機能と相性が抜群です。「今日の地域の天気に合わせた挨拶文」など、「最新情報」を含めたいならこちらが便利です。

3. 「Copilot(コパイロット)」:仕事でExcelを使う人

マイクロソフト製なので、仕事でExcelやWordを使っている人に馴染みやすいです。ビジネス用途で堅実に使いたいならおすすめです。

まずはスマホに「ChatGPT」のアプリを入れてみてください。それが一番の近道です。

商工会や、地元のPCに詳しい若手に「ちょっと教えて」と聞いてみるのも良いでしょう。まずは「仕事」と構えず、「新しい道具で遊んでみる」くらいの感覚で触ってみてください。

地域の未来のために

AIは「魔法の杖」ではありません。導入したからといって、明日から売上が倍になるわけでもないし、人がいらなくなるわけでもありません。でも、間違いなく「ハイテク機能を積んだ軽トラ」くらいの頼もしさはあります。

小回りが利いて、燃費が良くて、文句を言わずに働いてくれる。重い荷物を運ぶのを軽トラに任せるように、面倒な計算や単純作業をAIに任せてみる。そうやって生まれた時間で、新しい商品開発をしたり、家族と過ごす時間を増やしたりする。

それが、私たち地方の中小企業が生き残っていくための、一番「現実的」なAIとの付き合い方ではないでしょうか。

変化の激しい時代ですが、この美しい地域で商売を続けていくために。まずは手元のスマホから、新しい一歩を踏み出してみませんか?